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「どまんなか」で生きるということ

愛知県在住
earth yoga studio 副代表 鶴田あかねさん


3人の子どもの母であり、看護師として医療現場で働きながら、ヨガインストラクターとしても活動。日々の忙しさの中で「自分を取り戻す時間」としてヨガに出会い、心と体の変化を実感。インストラクター養成講座を経て、現在は愛知県春日井市のヨガスタジオを引き継ぎ運営している。仲間とともに地域貢献活動としてのゴミ拾いを続けながら、屋外でのヨガや瞑想の場も提供。ヨガを通して「ひとりひとりが本質の自分を思い出す時間」を育んでいる。

一枚のバスタオルから始まったヨガの旅

私がヨガと出会ったのは、看護師として、そして母として、日々の役割に追われる中でした。誘われて参加したパークヨガ。マットすら持っていなかった私は、バスタオルを敷いて芝生に座りました。

その頃まだ目が離せない年齢だった子どもを気にする私にインストラクターは優しく「マットの上にいるこの時間は、何者でもないただのあなたのまま、私の声に委ねてください。」と言い、子どもを私から離しスタッフに預けてくれました。

その言葉と優しさにふれ、目を閉じると、自然に涙が溢れてきました。自分が「自分のための時間」を持つ事に強い罪悪感を感じていることに気がつきました。その瞬間が、私のヨガの旅の始まりでした。目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をする。ただそれだけなのに、胸の奥にたまっていた疲れや緊張、我慢がじわじわと溶けていく感覚がありました。

「私はここにいていいんだ」「私は私のままでいいんだ」——ヨガを通して、そんなメッセージを受け取った気がしました。その一枚のバスタオルの上で過ごした時間が、私の人生を大きく変えるきっかけになりました。

看護師+ヨガインストラクターへ

心が揺さぶられたその体験の後、自分を生きるために環境を変えようとチャレンジを始めました。看護師としてもステージアップしたかった私は、やりたい看護とヨガの学びを同時にスタートさせ、学びながら働く日々が始まりました。

ヨガを学ぶにつれて、私は予防医療としての側面だけでなく、精神的な成長、内面の探求に惹かれていきました。ヨガは私にとって、「自分の本質に気がつく」手段。今では、愛知県春日井市で3人の子育てをしながら、看護師とヨガインストラクター、そして小さなスタジオの運営をしています。

ゴミ拾いから繋がったスタジオのご縁

今のスタジオを持つきっかけも、不思議なご縁でした。私は仲間たちと4年間、ゴミ拾いを続けてきました。その活動をインスタグラムに投稿していたところ、フォロワーの一人である先輩インストラクターから「あなたたちにスタジオを譲りたい」と声をかけていただいたんです。その方はご自身の体調の都合で運営が難しくなり、誰かに託したいと考えていたとのこと。私たちが「スタジオが欲しい」と何気なくリールに投稿したタイミングと重なって、まるで引き寄せられるように話が進みました。見学の翌週には見学に伺い、「私たちが引き継ぎます」と即決。2023年10月に話があり、2024年2月にはスタジオの運営が始まりました。


スタジオ運営の現実と葛藤

スタジオを始めた当初、想像以上に「苦戦」しました。場所が地元ではなく、地域のつながりもなかったため、会員さんを集めるのにとても苦労しました。少しずつお客様は来てくれましたが、運営費とインストラクターへの謝礼、スタジオの維持管理など、経済的な不安が常につきまといます。

スタジオ運営のスタッフは、もともと一緒にゴミ拾いをしていた仲間たち。信頼関係はあるものの、友人関係から雇用主とスタッフという関係に変わったことで、心理的な負担もありました。「ただの友達じゃなくなる」という現実に、戸惑いもありました。好意や仲間意識で成り立っていた関係性が、お金という現実を介在させることで、距離が生まれてしまう瞬間もありました。

それでも、「やると決めたからには、きちんと向き合う」という覚悟はありました。人に動いてもらうということ、人にお願いするということ。それは単なる業務ではなく、信頼と感謝の積み重ねで成り立つものだと、身をもって感じています。

自分のまんなかで生きるヨガ

私にとってヨガの本質は、「魂の意識で生きること」。思考や感情、肉体を超えて、自分のまんなかにある「本当の自分」とひとつになることです。自然の中に身を置いたりヨガや瞑想を続けることで、徐々にその境地に近づけるのではないかと感じています。


屋外でのヨガでは、五感が自然と開いていきます。風を感じ、草の匂いをかぎ、鳥の声に耳を澄ませる——そうすることで、自分の内側と外側が一つに溶け合うような感覚になります。そんな時間の中で、「自分って本当はどう感じているの?」「今の私は本当に満たされている?」と問い直すことができるんです。


中でも印象的だったのが、ある男性の参加者のことです。彼は、長い時間自我を殺し会社のために頑張るサラリーマンでした。「裸足で砂浜を歩きたかった」とビーチクリーンとヨガのイベントに参加してくれました。その後何度も参加し、固かった表情や話し方は回を重ねるごとにみるみる柔らかく、徐々に呼吸が整い、笑顔が見られる様になりました。「なんでこんなところにゴミがあるんだろう」「信じられない」と、どこか苛立ちのような気持ちでゴミを拾っていましたが、表情が柔らかくなるのと同時に、少しずつその口調も変わって行きました。「こんな事をするくらい余裕がないのだろうね」「この辺りは気持ちいいね」といった言葉が自然と出るようになっていました。

ある日、その方が「最近、自分のペースで深呼吸する時間を作ってるんです」と話してくれて、とても嬉しかったのを覚えています。

無理に何かを教えるのではなく、一緒に行動する中で自然に変化が生まれる——その過程こそ、私が大切にしたいヨガの在り方そのものだと感じました。

「頑張らない」経営の模索と学び

ヨガを学び続ける中で、私は「頑張らないこと」を大切にするようになりました。「心地よくないことは手放す」。それが自然とできるようになった反面、経営に携わる者としては課題も感じています。


ありがたい事に、3人で共同経営をした事により、ほとんどが得意を生かして上手く作業を分配しながら進めて来ることができました。「無理なく心地よく」というバランスは、経営においても大切にしています。それでも「経営者」としての自分に戸惑う瞬間は今でもよくあります。心地よくないと思う事にも向き合わざるを得ない場合も、もちろんあります。


思い描いていたように集客が伸びない日が続くと、「私には向いていないのかもしれない」と不安になることもあります。そんなときは、原点に戻って、「私達がこの場所を始めたのは何のため?」と言葉にして、話すことを大切にしています。

それが何よりも支えになっています。

原点に帰ることで、また、向き合う事ができます。心地よさは、今この瞬間だけではなく広い視点で見た時の、その先にある結果として待っているものであったり、急に現れたりもするものだと知りました。


そんな小さな発見も、全て、共に活動し、気付きを得て成長してきた仲間と乗り越える事が楽しく、喜びでもあるのです。苦しんで頑張るのではなく、目の前のミッションを友達とチャレンジしてクリアして行く子どもの様に、全力で楽しみながら経営というものを学ぶ機会をいただいています。


「人と人が繋がるあたたかい場を作りたかった」「誰かが自分自身に戻る時間を届けたかった」という答えがいつも出てきます。その思いを忘れずにいられることが、私達の背中をまた、押してくれるんです。

課題と思わない

よく「スタジオ運営で大変だったことは?」と聞かれますが、正直なところ、私自身はあまり「大変」と感じていないんです。もちろん、会員さんが思うように増えなかったり、事務作業が煩雑だったり、人にお願いすることへの葛藤があったり、現実的な課題はたくさんあります。

でも私は、自分の性格がとても楽観的なこともあって、「なんとかなるだろう」「できることからやればいい」と自然に思えるんです。目の前のことを一つずつやっていく中で、解決策が見つかったり、人とのつながりに助けられたりする経験を何度もしてきたからかもしれません。
何か問題が起きても、「これは私が成長するための機会だ」と思えるようになりました。それは、ヨガを通じて自分の内側と向き合ってきたことも大きいと思います。

「どまんなか」で生きるということ

私は常に「自分のまんなかで生きる」ことを意識しています。それは、自分の感覚に正直でいること。世間や周囲の期待に応えるのではなく、自分の内側の声に耳を傾けて行動することです。

頭では「こうすべき」と考えていても、心が「違う」と言っているとき、その声に従うようにしています。ヨガや瞑想は、その感覚を研ぎ澄ませてくれる大切な時間。どんなに忙しくてもその時間は手放さないようにしています。


多くの日本人がそうな様に私も、「ちゃんとやらなきゃ」「迷惑をかけちゃいけない」と、常に人の目を気にして生きていました。でも、ヨガと出会い、呼吸を深め、心と向き合ううちに、「自分の命を、誰のものにもせずに生きていく」感覚が芽生えました。

それが「自分のまんなかで生きる」ということ。心がYESと言っているか。魂が震えているか。

その感覚を信じて進むことが、私の生き方です。

小さな夢が、大きな未来に繋がる

私は夢を叶えるために、小さな行動を大切にしています。

私はなぜか漠然と「魂の修行がしたい」と思っていました。最近それを叶えるためにインドに行くと決め実際3人の子供を夫に託し、看護の仕事も調整し、行動に移す事ができました。

どの様に叶えたかというと、いきなり周囲に宣言するというよりは、普段から少しずつ「自分の価値観」を伝えるようにしていた事が大切だった様に思います。

家族には「私は、学ぶことが好き。」「やりたい事には時間もお金も使いたい。」言葉でも態度でもそれを伝えていました。それが自然と「お母さんはいつかどこかに学びに行くかもしれない。」という前提を家族の中に作ってくれていたんです。

職場でも、日頃から「看護以外にもやりたい事がある」「心の学びがしたい」と言葉にしてきました。仕事は人生の一部であり、自分の大切な事を優先する生き方をしていると伝え、勤務形態も話し合いの上就職しています。いざ本当にインド行きを伝えたときも、誰も驚かず、「あかねさんならそうすると思った」と、反対どころか、当の私が戸惑うほどに協力をしてくれました。

夢を叶えるには、準備が必要だと感じました。

でもその準備は、大げさなものではなくて、ありのままをどんな時も、誰の前でも大切にする事です。日々の中で、自分の想いを少しずつ言葉にしていくこと。それがやがて周囲の理解を育み、行動への後押しになります。

「自分はまだできる」と感じている人に伝えたい

もし今、「自分のやりたいことがわからない」「自分らしさが見えない」と感じている方がいたら、まずはほんの小さなことでもいいから、自分の心が喜ぶことをしてみてください。

美味しいお茶を淹れる、朝日を浴びて深呼吸する、手帳に「ありがとう」と書いてみる——そういう些細なことが、自分のまんなかと繋がる扉になると思います。

そして、自分の感覚を大切にしてください。誰かの正解ではなく、自分の正解
を見つける旅を、恐れずに歩んでほしです。

私もまだ道の途中です。でも、今日も「まんなか」で生きようとすること。ひとりひとりが個性ある光として立った時、広い視野で見ると世界は調和している。

まんなかで生きる事があなたの純度を高め、少しずつ世界を変えていくと信じています。

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取材:きたじまあいこ