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50代からでも出会いにより楽しい未来が開ける

香川県在住

日本トルコモザイクランプ協会 代表 花崎かおりさん

香川県を拠点に、トルコランプの魅力を伝える活動を展開している花崎かおりさん。花や野菜の苗を扱う種苗店に嫁ぎ、長年その世界で生きてきた彼女が、まったく異なるジャンルのトルコランプに出会い、惹かれ、教室を立ち上げるに至るまでのストーリーには、人生を豊かに楽しむためのヒントがたくさん詰まっています。今回はその歩みを伺いました。

トルコランプとの出会い

私はもともと、花や野菜の苗を扱う種苗店に嫁ぎ、長年そのお店で働いていました。3〜4年前のこと、ちょうどコロナが少し下火になってきた頃に「トルコランプ」と出会いました。もともと趣味で何か始めてみたいと思っていたところ、お客様から「奥さん、こういうの好きじゃない?」とスマホで写真を見せてもらったんです。それがとても綺麗で、「えっ、自分で作れるの?」と興味を持ち、体験に行ったのが始まりでした。

あまりの楽しさに教室を開く

その体験があまりにも楽しくて、「これは趣味で終わらせるのはもったいない」と強く感じたんです。作っている間は、無心になって手を動かしていく楽しさ、完成したときの達成感、そしてスイッチを入れた瞬間に灯る光の美しさに、心を奪われてしまいました。

実際に一つ作ってみると、「次はこんなデザインにしてみたい」「違う色の組み合わせも試してみたい」と、次から次へとアイデアが浮かんできて、ただの体験では終われなくなってしまったんです。気づけば、ガーデニングの合間にトルコランプを作る時間を取るようになり、「この楽しさを、もっとたくさんの人と共有したい」という気持ちが芽生えていきました。

もともとガーデニングの寄せ植え教室を開いていた経験もあり、「教室」という形であれば、自分のスタイルで無理なく広めていけるのではと思い、教室展開を決意しました。

私は今54歳ですが、当時50歳を少し過ぎた頃。子育ても一段落して、自分の時間が持てるようになったタイミングでした。私たちの世代は、第二の人生を楽しめる年代でもあるので、「楽しい」を仕事に繋げることができたら、人生がもっと豊かになるんじゃないかと感じたんです。

活動の広がりとご縁の力

トルコランプはガーデニングとは全く違う分野でしたが、最初はお花屋のインスタグラムのアカウントでランプも一緒に紹介していました。そんな投稿をきっかけに、リビングカルチャー高松さんに講師として声をかけていただいたり、岡山のカルチャーセンターにも自分から発信して、教室を持つことができるようになりました。

もともと教わった先生が岡山に住んでいて、ワークショップ形式でイベント会場を使って教えていたんです。先生が湯布院に移られたのを機に、私が四国側で教室を担当することになり、岡山のカルチャーセンターでも教室を開くことになりました。

その後、ある日とても印象的な出来事がありました。高松で行ったワークショップに、一人の女性が参加してくださいました。岡山からわざわざ来てくださったということで、その場で「岡山でも教室をしているので、よかったらそちらに来てくださいね」と何気なくお話をしたんです。すると、その女性が「実は私、岡山のオリエント美術館の者なんです」と名乗られて、思わず驚いてしまいました。

その方はちょうど「ガラスの創造力」という特別展を企画されており、安全に参加できる体験型のワークショップを探していたとのこと。トルコランプは火や電気を使わず、糊だけで制作できるため、安全性の面でも美術館にとって理想的だったようです。実際に体験していただいたことで、トルコランプの魅力を直接感じていただけたのも大きかったと思います。

そこから話が進み、正式にワークショップとして実施が決定。トルコランプが、歴史ある美術館のイベントの一環として紹介されることになったのです。まさにご縁が運んでくれた素晴らしい展開で、今振り返っても感謝の気持ちでいっぱいです。

作る楽しさと癒し

トルコランプは裸のガラスの玉に、決まった形の色ガラスをデザインに合わせて貼っていきます。台紙を使ってイメージを作ってから、ガラスに直接貼っていき、最後にビーズを散らして完成です。Sサイズなら90〜120分ほどで仕上げられます。

最初は難しそうと思われがちですが、実際にやってみると「あ、できるんや」と感動する方が多いです。手を動かすことで集中できるので、瞑想のような感覚で癒されますし、完成したときの達成感と、灯したときの優しい光の温もりが本当に魅力的なんです。

トルコ文化との出会い

2025年1月にはトルコにも初めて行きました。行く前までは、トルコランプが現地のモスクなどにたくさん飾られているイメージがありましたが、実際に訪れてみると、今のモスクにはあまり見られず、オスマン帝国時代など古い時代の名残として一部にブルー系のランプが使われていたことがあると聞きました。

トルコのランプはもともと、祈りや願いを込めて作られていた伝統的な工芸品で、色や形にはそれぞれ意味があります。星形には「願い」、キリム柄には「五穀豊穣」といった縁起の良い意味が込められており、そうした歴史や背景を知ることで、ますますランプづくりの奥深さに惹かれるようになりました。

その後、2025年4月1日、日本トルコモザイク協会を設立しました。

また、現地の雰囲気や空気感、食文化や人とのふれあいを通じて、トルコという国がとても身近に感じられるようになりました。香川県に戻ってからも、「もっとトルコの文化を伝えたい」という思いが強くなり、そんな中で、車で10分ほどの所に住んでいたトルコ人の女性と出会うことができたのはまさに運命のようでした。

彼女も「日本の方にトルコ文化をもっと知ってほしい」という気持ちを持っており、意気投合。今では一緒に「チャイ会」を企画し、トルコの紅茶やお菓子を実演しながら文化交流の場をつくっています。手仕事だけでなく、文化そのものも一緒に伝えられるような、そんな活動の広がりを今後も大切にしていきたいと思っています。

介護から学んだこと

私は結婚当初から、嫁ぎ先の祖父母の介護をしてきました。おばあちゃんは3年ほど寝たきりで、自宅でずっと付き添っていました。当時は介護保険制度も整っていなかったので、すべて自分でやる必要がありました。

その後おじいちゃんの介護も続き、合計12年ほど介護生活が続きました。その中で、気持ちの切り替えや、我慢強さが自然と身についたと思います。介護を通じて、人が生きること、死に向かうことを身近で見てきたからこそ、今ある時間をどう使うか、自分がどう生きるかを真剣に考えるようになりました。

介護が終わった後、何かに後押しされるようにいろんな縁が繋がって、教室を開いたり、発信したりできるようになってきました。あの経験があったからこそ、今があると本当に感じています。

岡山を拠点にしたこれからの展開

今、香川県には講師が10人程度います。次は岡山を拠点にして、中国・四国地方の各県に10人ずつ講師を育てていけたらと考えています。1県に2~3人いると、実際に協力し合っていけるのではないか、と思っています。

岡山は交通の便も良く、四国・中国地方のちょうど中間に位置しているので、今借りている岡山の教室を中心に、周辺の講師たちが集まりやすい環境が整っています。私自身が岡山へ出向くことも多くなりましたが、それによって岡山を起点に新しい出会いやご縁がどんどん増えていきました。

岡山の教室では、定期的なレッスンだけでなく、講師同士の情報交換や作品の見せ合いもできるような場にしていきたいと考えています。また、香川や高松と同様に、リビングカルチャーや美術館、地域イベントとの連携も進めていきたいと思っています。

将来的には、岡山を中心に講師の皆さんと一緒に作品展を開催したり、地域ごとの展示会を行って、地元の方々にもトルコランプの魅力をもっと身近に感じてもらえるような場を作っていけたらと考えています。

そして、この岡山での動きが他の県にも波及し、それぞれの地域でトルコランプを通じた交流や発信が生まれていくことが、私の今の大きな目標です。

同世代の女性の皆さんへ

私たちの世代は、まだまだこれからだと思っています。「自分には無理」と思わずに、まずはやってみてほしい。新しい自分を発見できるかもしれません。

私自身も「こんなことできるんや」と思うような体験をたくさんしてきました。知らなかった自分に出会える喜びを、たくさんの人に知ってもらえたら嬉しいです。

取材を通して

「好きなこと」「楽しいと感じること」から広がる人生は、何歳からでも始められる——花崎かおりさんの言葉からは、そんな前向きなメッセージがまっすぐに伝わってきました。手仕事を通じて人と繋がり、地域に根ざしながら夢を育てていくその姿は、多くの人に勇気を与えてくれると感じました。

取材 きたじまあいこ